ガラス作家 小寺 暁洋さんとの出会い
「あたら‐もの」バイヤーをしておりますなみです。
ちょっとだけ自己紹介をさせていただきます。
私は自分の部屋をこよなく愛する超インドア派。雑貨や本、植物に囲まれて暮らしております。
私は食器が好きです。
大正や昭和の時代のちょっと古いものから、北欧の有名デザインまで収集しています。
人に語れるほどの知識があるわけでも、ものすごく作家さんに詳しいわけでもありません。
ふらっと入ったショップの方のお話や知り合いの古道具屋さんの店主からお話を聞いて、あとは気に入ったら直感で購入してしまうタイプ。
値段もあんまり関係ないので、食器棚には作家さんのものから1個百円のものまで混在しています。
今回、吹きガラス作家の小寺さんとお会いすることができたのは、あたら‐もののディレクターをしてくださっている萩原さんのおかげです。
紹介いただいてすぐに小寺さんのInstagramを拝見するとほんとうに素敵なガラスたちであふれていました。
ちょっと濁りがあるもの、昔のガラスにあるようなゆらぎや気泡、色味。
単純に「ほんとうに素敵。ドンピシャ。タイプ。」だったのです。
「作っている様子を見に来てもらってもいいですよ!」と快くいっていただいたので、さっそく石川県の工房にお伺いしました。
のどかな山間の田んぼに囲まれた工房は古い学校を改装されたものでした。
ゆったりとした時間が流れる場所で小寺さんは制作をされていました。
吹きガラスがどう作られるのか、おおまかには知っていましたが、じっくりと見るのは初めてです。
さらに新進気鋭の作家さんの制作現場。楽しくないわけがありません。
高温の溶融炉から溶けたガラスを吹き竿にとります。
丁寧に吹いて空気を入れながら膨らましていきます。
何度も形を整えながら、ある程度の大きさになったら、今後は飲み口を作っていきます。
箸のような道具で必要な大きさに整え、最後は吹き竿からトンっと離したら完成です。
この一連の作業を流れるような所作で行います。
単なる溶けたガラスの塊が小寺さんの手によってどんどんグラスになっていく様子はほんとうに魔法のよう。
一つ一つの作業はとても美しく、止まることがありません。
ガラスは一瞬たりとも同じ形にとどまってくれません。
見ているこっちも息をのみ、話しかけるのをためらうほどです。
出来上がったものは工業製品にない「味」がありました。
今回「あたら‐もの」では使い方を限定せず、使い手に用途をゆだね、好きなように使ってもらいたいと思っていたので、小寺さんには申し訳ないほどベーシックな蕎麦猪口を作っていただきました。
この蕎麦猪口、私の家でも大活躍しています。
お茶やお酒を入れるグラスとして、ヨーグルトやデザートを入れるカップとして、ちょっとしたサラダやおかずを入れる小鉢として、さらには切り花などを飾って花瓶の代わりとして・・・
このベーシックが中に入るものの個性を引き出し、素敵な感じに収まるのです。
まさしく、私の生活に寄り添ってくれる「あたら-もの」となりました。
毎日、使わない日はありません。
この蕎麦猪口が来てからほかのものを使用することが少なくなってしまいました。
洗う時、裏を見ると、職人が「吹きガラス」という製法で、一点一点つくっている証である吹き竿の跡が残っています。