石川県
ガラスの蕎麦猪口
吹きガラス作家 小寺 暁洋
定番から感じる特別な手仕事の跡
【あたら‐もの 蕎麦猪口】という名前ですが、和え物やサラダ、フルーツから、コーヒーやジュース、ビールまで、うつわとしても、グラスとしても使えます。
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石川県
ガラス作家 小寺 暁洋
石川県
吹きガラス作家 小寺 暁洋
定番から感じる特別な手仕事の跡
【あたら‐もの 蕎麦猪口】という名前ですが、和え物やサラダ、フルーツから、コーヒーやジュース、ビールまで、うつわとしても、グラスとしても使えます。
【あたら‐もの】には、箱膳のなかに一人分の食器を入れる、というコンセプトがありますが、ガラスのうつわは一つしかありません。当然、多くの役割が求められます。心がけたのは、多用途に対応できる究極のシンプル。
1958年に発売された、フィンランドのデザイナー、カイ・フランクがデザインした「カルティオ」などもヒントにさせていただきました。
ノーマルで、定番のかたちですが、いくつか並べて、見て、触れると、工業製品にはない、微妙な厚みや大きさの違いに気づくことでしょう。
それは、職人が「吹きガラス」という製法で、一点一点つくっているから。
底面に刻まれた吹き竿の跡が、何よりの証です。
どこにでもありそうで、なかなかない、そのガラスに遊び心を加えたいと思いました。
【あたら‐もの くらわんか碗】【あたら‐もの 楕円皿】とも合うように選んだ、縁に巻いた2種類の濃淡の青です。
涼しげで、どこか古風で、そこはかとなく個性を発揮しつつ、他のうつわとも調和します。
夕暮れ時、小寺さんの創作の時間は始まります。
溶けているガラスを拭き竿に巻き取り、かたちを整え、息を吹き込むと、薄闇のなかに、ぽっとオレンジの光が灯ります。
熱せられたガラスは流動的で、常にかたちが変わり続けます。息を呑むような時間の連続です。
ようやく、【あたら‐もの 蕎麦猪口】の完成が見えてきました。洋ばし(ジャック)と呼ばれる道具を駆使して、口あたりを左右する重要な縁を整えます。
10代の頃に見た、吹きガラスの製作の風景、空気感や緊張感に憧れ、ガラス作家を志した小寺さん。
製作の様子を眺めていると、動きによどみがなく、流れるように作業は進んでいきます。
「大正ガラスのように、厚みが違ったり、気泡が入っていたり、揺らぎが感じられたり・・・そうした古いガラスを参考に、自分らしい作品をつくっていきたい」と語ります。
陶磁器や漆器ほどの明確な産地はありませんが、富山市には富山ガラス工房、金沢市には牧山ガラス工房があるなど、富山や石川は吹きガラスがさかんです。
現在、小寺さんは、金沢市内とは思えない、周囲が緑に囲まれた自然豊かな場所にある、牧山ガラス工房で、昼間は職員をしながら、夕方から創作に励んでいます。